胃ガン

1. 胃ガン診療の流れ

1

ガンの疑い
「いつもと体調が違う」と感じたら、なるべく早く受診しましょう。
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2

受診
現在の症状や気になっていることなどを担当医に話して下さい。担当医との会話は、メモしておくと便利です。次の診察や検査の予定が決まります。
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3

検査や診断
X線検査や内視鏡検査、病理検査、超音波検査、CT検査、注腸検査などの検査が行われ、検査の結果や診断の説明があります。
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4

治療法の選択
ガンや体の状態に合わせ、治療方針の説明があります。
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5

治療
手術治療、放射線療法、化学療法(抗ガン剤)などの治療法が決まり、治療が始まります。困ったことや辛いことは、遠慮せずに医師や看護婦に話して下さい。
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6

経過観察
治療後、体調の変化やガンの再発・転移がないかなどを確認します。
しばらく通院し、検査などを行うことがあります。

2. 胃とは

胃の図
人が物を食べると、必ず食道を通って「胃」に入ります。胃は、食べた物を胃液と混ぜわせ、どろどろのお粥(かゆ)のような状態にし、「十二指腸」に送り出しています。胃の食道からの入り口部分を「①噴門部」、中心部分の「②胃体部」、十二指腸への出口にある「③幽門部」と、大きく分けられます。(図1)

胃の図

胃の上は「横隔膜」(胸と腹腔との間にある膜状の筋肉)、左は「a脾臓」、右は「b肝臓」、後ろは「c膵臓」に接しています。(図2)また、胃の壁は「5つの層」(図3)で、できていて、内側の「ア.粘膜」は胃液や粘液を分泌し、「イ.粘膜下層」は粘膜を支え、平滑筋を粘膜に接着させ、中心の「ウ.固有筋層」は胃を動かし、「エ.漿膜下層」は血管やリンパ管の通り道、「オ.漿膜」は胃を包む外層です。

胃の断面図

 

3. 胃ガンの発症

胃ガンの発症の原因の一つとして、「胃炎」があげられます。「胃炎」がきっかけとなり「胃ポリープ」や「潰瘍(かいよう)」、さらには「胃ガン」を引き起こすと言われています。「胃炎」には、「ヘリコバクター・ピロリ菌」という胃の中に住む細菌が関わっていることがわかってきました。ピロリ菌に感染すると、ピロリ菌を除去しようとする白血球やリンパ球が炎症を引き起こし、「胃炎」の症状があらわれます。40歳以上の日本人では約7割が、このピロリ菌を保菌しているという、国立ガンセンターの報告があり、慢性胃炎のほとんどの人がピロリ菌に感染していることがわかっています。ですが、すべての保菌者が「胃炎」や「胃ポリープ」「潰瘍」「胃ガン」などを発症する訳ではありません。ピロリ菌は、血液や尿、診断薬を使い服用前と服用後の呼気を集める検査や、内視鏡などで検査ができます。ピロリ菌が見つかった場合でも約7割の方はお薬の服用で除菌が可能です。ただし、1度で除菌が成功するとは限らないため、除菌が必要な場合は二次除菌が認められています。

その他に、食物中の塩分の摂り過ぎ、たばこや、熱い食べ物や飲み物、肉や魚の焦げた部分、早食い、お酒の飲み過ぎ、ストレスなども胃ガンの発症につながっているようです。「胃ガン」は世界各国で比べると、日本人に最も多くみられます。味噌や醤油を好んで食べる習慣があるので、知らず知らずのうちに塩分を多く摂ることになるのでしょう。一方で、ビタミンCやカロテンを多く含む野菜や果物を摂る人には胃ガンが少ないことがわかっています。

このように、胃ガンの発症原因と言われるものがいくつかありますが、「ピロリ菌の除菌」や「生活習慣の改善」だけで、胃ガンを完全に防ぐことはできません。定期的な受診や検査を行い早期発見、早期治療することが大切です。

4. 胃ガンの検査と受診

胃ガンが疑われると、「内視鏡検査」や「胃X線検査(バリウム検査)」を行い、「胸部X線検査」、「腹部超音波(エコー)検査」、「CT検査」、「注腸検査」などで胃ガンの広がり(転移)を調べます。

内視鏡検査
内視鏡を口から胃の中に挿入し、胃の内部を調べる検査です。ガンと疑われる組織を一部採りガン細胞の有無を調べる病理検査を行います。
胃X線検査(バリウム検査)
バリウムと発泡剤(胃を膨らませるため)を飲み、胃の形や粘膜の状態をX線で見る検査です。
胸部X線検査
胸部にX線照射を行い、肺への転移がないかを調べる検査です。
腹部超音波(エコー)検査
超音波を使い、内臓の様子を調べる検査です。肝臓やリンパ節への転移がないかを調べます。
CT検査
X線を使った体の輪切り映像で、腹部や胸部の異常を調べる検査です。治療前検査では、造形剤を注射して検査を行いますので、ヨードアレルギーがある場合は注意が必要です。
注腸検査
おしりからバリウムと空気を注入し、大腸の形をX線画像で確認する検査です。大腸や腹膜に転移がないかを調べます。

5. 胃ガンとは

胃ガン
胃ガンとは、胃の壁の内側にできた「悪性腫瘍」のことを言います。
ガン細胞が発生し、約3年から5年の時間をかけて、やっと検査で発見できる5mm程の大きさになります。内側の粘膜にできたガンは、進行するにつれ、胃の壁を深く広く浸潤(しんじゅん)し、「転移」しやすくなります。もっとも多い転移先は「リンパ節」です。増殖したガン細胞はさらにリンパ管や血管に入り込こみ、流れに乗って腹膜や肝臓など、他の臓器へと転移を続けていきます。

胃ガン

胃ガンには、胃の壁には現れず粘膜層の下で木の根のように広がる、特殊な「スキルス胃ガン」があります。スキルス胃ガンは進行が早く、進行していくと胃の粘膜全体が硬くなっていきます。他の胃ガンと同様に他臓器への転移がなければ手術ができますが、スキルス胃ガンは発見が難しく多くの場合、診断した時点で既に転移しています。スキルス胃ガンはガン全体の約1割で、30代から40代の女性にもっとも多くみられます。

6. 胃ガンの症状

早期胃ガンの場合症状はあまりなく、あっても、

  • 食欲がなくなる
  • 胃の不快感
  • 吐き気
  • 胸焼け
  • 食後にお腹が張った感じがする、腹部の膨満感(ぼうまんかん)など

なんとなく・・・といった軽い程度です。
日常生活において特に珍しい症状ではないので、胃ガンの自覚症状がなく、つい放置してしまいがちです。併発している「胃炎」や「胃潰瘍」の症状で、胃ガンが見つかる方が多いようです。

胃ガンは進行してくると、次のような症状が起こるようになります。

  • 食欲不振
  • 体力の衰え(衰弱)
  • 胃痛
  • 吐血(コーヒー色の血)
  • 下血(黒い便)
  • 黄疸(おうだん:肌の色が黄色になること)
  • 腹水(ふくすい:お腹に多量の液体が溜まること)など

スキルス胃ガンは、背中の方に広がりやすく、腰痛をきっかけに発見されることがあります。

7. 胃ガン ステージ(病期)

胃ガンは悪性腫瘍ができている場所、深さや大きさ、転移などの段階により、ⅠA期、ⅠB期、ⅡA期、ⅡB期、ⅢA期、ⅢB期、ⅢC期、Ⅳ期に分けられます。

 
EMR:「内視鏡的粘膜切除術」(ないしきょうてきねんまくせつじょじゅつ)
内視鏡を使い、ガンのある粘膜の下に生理食塩水などを注入し、ガンのある部分を浮かし、ワイヤーで焼き切る方法
ESD:「内視鏡的粘膜層剥離術」(ないしきょうてきねんまくそうはくりじゅつ)
内視鏡を使い、ガンのある粘膜の下をナイフではぎ取る方法
D1郭清(かくせい)
胃に接したリンパ節に転移がある場合の切除
D2郭清
胃を養うリンパ節に転移がある場合の切除定型手術:胃の2/3以上とD2郭清
補助化学療法
手術治療後行う化学療法(抗ガン剤治療)
拡大手術(合併切除)
転移した他臓器を一緒に切除

8. 胃ガン 治療法

内視鏡的治療
ガンが小さく、まだ浅い場所にあり、リンパ節に転移がない場合には内視鏡を使った治療が行われることがあります。内視鏡の先についた針金のようなものでガンを切り取る方法と、内視鏡の先に付いたナイフではぎ取る方法があります。手術の跡もほとんど残らず、短期の入院で回復も早いのですが、リンパ節に転移がなく、広がりの小さい初期のガンにしか適応しません。
手術治療
胃ガンでは最も標準的な治療法です。切除の範囲は、ガンのある場所やステージなどで決定します。周辺のリンパ節に転移が見られるときは、一緒に切除します。手術により、周囲の細胞(目に見えないガン細胞が散らばっている可能性があるため)を含めて取り除くことが有効な治療法です。しかし、合併症や後遺症などがあらわれる場合もあります。
化学療法(抗ガン剤治療)
抗ガン剤には、ガン細胞を殺したり増殖を抑えたりする作用があります。手術と組み合わせて使われる方法(補助化学療法)と、手術が難しい場合に使われる方法があります。抗ガン剤を使用する場合、人によっては吐き気や脱毛など多くの副作用が伴います。また、さまざまな抗ガン剤が開発されており、効き目の高い抗ガン剤も出てきています。外来で抗ガン剤治療を受ける日帰り治療や、飲むタイプの抗ガン剤を使う在宅療法が広がるなど、抗ガン剤治療の内容に変化が見られるようになっています。
放射線療法
手術が難しい場合や、手術後に再発したガンの痛みを抑えるために行われます。抗ガン剤の効かない脳への転移による頭痛や嘔吐などの治療にも使用されます。放射線により、胃の粘膜が荒れたり、胃痛や胃潰瘍(いかいよう)のような症状になる副作用が伴うことがあります。
緩和手術(かんわしゅじゅつ)・姑息手術(こそくしゅじつ)
手術が難しい場合やガンの完治が難しい場合に、ガンを治療する目的ではなく、少しでも生活がしやすいように行う手術です。
緩和医療(かんわいりょう)
患者さんの苦痛を和らげることを目的とした、患者さんとその家族に対して行う医療ケアです。ガンの病状や時期に関係なく、体や心のつらさを和らげ、「その人らしさ」を大切にすることを目的に行います。また、ホスピス(緩和ケア病棟)という、ガンの進行に伴う体や精神的な症状があり、ガンの治療が難しくなったりガンの治療を希望しない方を主な対象とした施設などもあります。(施設により、受け入れの基準が異なるため、直接施設にお尋ねください。)

9. 胃ガン 治療の経過

転移について
転移とは、胃ガン細胞が血液やリンパの流れに乗って、他の臓器で増殖することです。
手術でガンをすべて切除できたように見えても、ほかの臓器へ転移している可能性があります。胃ガンでは、リンパ節に転移しやすく、肝臓や腹膜にも転移することがあります。
再発・再発予防
再発とは、手術や抗ガン剤の治療により、一旦は治ったように見えていたガンが、再び出現することを言います。再発の状態は人によって異なり、手術で残った胃だけでなく、肝臓などの胃以外の臓器への再発や、1箇所ではなく、重複して再発することも多くみられます。抗ガン剤による治療が一般的ですが、手術や放射線などの治療も行われます。胃ガンの発生には、食事が大きなかかわりを持っていると考えられています。あらゆる食品には、発ガン性の物質がわずかに含まれています。
しかし、その食品をすべて除いた食事をとるのは難しい事です。特に発ガン性物質の多い食品をたくさん食べたり、習慣的に食べ続けたりすることを止める事が、胃がんの予防につながると言われています。例えば、塩分の多い物や魚や肉の焦げたもの、また、熱い物を急に胃の中に飲み込んだりすることもよくないでしょう。いろいろな食品ををバランスよく食べることが体にとても大事なことです。
再発予防の治療
再発を予防するための治療には、根治手術後も目に見えないガンが存在する可能性があるため、主として抗ガン剤による「化学療法」が行われることがあります。
あまり副作用の強い薬は使わず、飲み薬の抗ガン剤(経口抗ガン剤)が使われます。
予後
消化器系のガンの中で、大腸ガンと並び、胃ガンは治りやすいガンとして知られています。ステージによって、予後に大きな差があります。早期の胃ガンであれば、予後は非常に良好で、ガンをすべて切除できた場合の治癒(ちゆ)率は90%以上です。どんなガンでも同じことが言えますが、進行するほど予後が悪くなってしまいますので、できるだけ早い発見と治療が重要になってきます。