前立腺ガン

1. 前立腺ガン診療の流れ

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ガンの疑い
「いつもと体調が違う」と感じたら、なるべく早く受診しましょう。
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受診
現在の症状や気になっていることなどを担当医に話して下さい。担当医との会話は、メモしておくと便利です。次の診察や検査の予定が決まります。
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検査や診断
直腸診、前立腺生検、CT検査、骨シンチグラフィー検査などの検査が行われ、検査の結果や診断の説明があります。
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4

治療法の選択
ガンや体の状態に合わせ、治療方針の説明があります。
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5

治療
手術治療、放射線療法、化学療法(抗ガン剤)などの治療法が決まり、治療が始まります。困ったことや辛いことは、遠慮せずに医師や看護婦に話して下さい。
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経過観察
治療後、体調の変化やガンの再発・転移がないかなどを確認します。
しばらく通院し、検査などを行うことがあります。

2. 前立腺とは

男性にだけある臓器で、膀胱の下にある尿道をくるむように位置します。
排尿や精液の流れを調節する働きだけでなく、生殖器のひとつとして生殖に深く関わっており、精液の一部を作っています。精液は前立腺の後ろにある「①精嚢」が作る精液と、「②睾丸」や「③副睾丸」、「④輸精管」が作る分泌液に精子がまざったものと、前立腺が作るほんの一部の精液、3つが一緒になり精液として排出されます。前立腺には排尿にも関わりがあります。肝臓で作られた尿が、一旦膀胱に蓄積され、尿道を通って排出するコントロールを自律神経が行っており、尿もれが起きないように前立腺の平滑筋が働いています。構造は、尿管を包んでいる「a.内腺」と、それをさらに包んでいる「b.外腺」に分かれていて、すぐ後ろには「直腸」、上部に「精嚢」、下には主に尿を切るときに使われる筋肉の「c.PC筋」があります。

前立腺ガン

3. 前立腺ガンの発症

前立腺ガンの発症のリスクを上げているものは、次のようなことが考えられます。

年齢(高齢者) 加齢によるホルモンバランスの崩れ。
人種 頻度が高い順に、黒人、白人、アジア人です。
遺伝 若年では、家族性の前立腺ガンがあり、家族に前立腺ガン患者がいる場合は、発症の可能性は高くなります。

米国では、家族に1人でも前立腺ガンにかかった人がいると、危険性は2倍、2人いれば5倍になるという報告があるようです。

そのほかにも、食生活に問題があるのではないかと考えられています。肪分の多い肉類の食べ過ぎや緑黄色野菜の摂取不足、アルコールの多量摂取などもあげられています。

4. 前立腺ガンの検査

前立腺ガンが疑われると、「直腸診」、「前立腺生検」、「CT検査」、骨への転移を調べる
ために「骨シンチグラフィー検査」などの検査行います。

直腸診
肛門から5cmくらい指を入れ、前立腺の表面を直腸から触って状態を調べます。前立腺が硬く、でこぼこがあると前立腺ガンの可能性が高くなります。
前立腺生検
肛門、会陰部(えいんぶ:外陰部と肛門の間)から超音波を見ながら前立腺に針を刺し、前立腺の左右の辺縁(へんえん)領域から組織を採取して細胞を調べます。検査時間は30分から1時間くらいですが、出血の心配があるので入院して検査が行われることがあります。
CT検査
X線を使った体の輪切り映像で、腹部や胸部の異常を調べる検査です。治療前検査では、造影剤を注射して検査を行いますので、ヨードアレルギーがある場合は注意が必要です。ドーナツ状のスキャナーを通過して撮影します。
骨シンチグラフィー検査
進行した前立腺ガンでは骨へ転移することがあります。放射線医薬品を注射し、ガン細胞に集まる放射線薬品を撮影し、転移を調べます。

5. 前立腺ガンとは

前立腺がんは、前立腺の外腺から発症する「悪性腫瘍」のことをいいます。
成長が遅く、細胞がガン化して、成長するまでに35年から40年以上かかると考えられています。特徴として、男性ホルモンにより進行が早まるので、ガン細胞の増殖を止めるために、男性ホルモンの作用を抑えることが、有効な治療法です。前立腺ガンが進行すると、ガン細胞が血液の流れに乗り、ほかの臓器に転移し腫瘤(しゅりゅう:かたまり)を作ります。もっとも多い転移先はリンパ節と骨があげられます。骨盤や脊髄(せきずい)、肋骨(ろっこつ)、大腿骨(だいたいこつ)に多く転移します。前立腺ガンは高齢に多く見られ、45歳以下の発症はあまりありません。50歳代から徐々に増え、80歳代では30%から40%が前立腺ガンを持っていると言われています。高齢者に発症する前立腺ガンの多くは、進行が遅く、症状もあまりないため、寿命に影響はないガンとして考えられています。

6. 前立腺ガンの症状

前立腺ガンの早期では特有の症状はありませんが、進行するとガンが大きくなり、尿道を圧迫します。排尿(はいにょう)が困難になり、排尿障害が起こります。
見られる症状としては、

  • 頻尿(ひんにょう:排尿の回数が多いこと。平均的な排尿回数は1日約7回程度)
  • 排尿時に時々痛みを伴う
  • 尿や精液に血が混じる

などの症状がみられます。

前立腺肥大症と前立腺ガンとの症状は大差がなく、前立腺肥大症の治療で見つかることも多いようです。前立腺肥大症は内腺に発生する良性腫瘍です。ガンとは違い、周囲に広がったり、骨や臓器に転移することはありません。また、前立肥大症から前立腺ガンに進むことはないと考えられています。また、骨に転移しやすいため、腰痛などで骨の検査を受け、発見されることもあります。

7. 前立腺ガン ステージ(病期)

前立腺ガンは悪性腫瘍ができている場所、深さや大きさ、転移などの段階により、A期、B期、C期、D1期、D2期に分けられます。

前立腺ガンの進み具合(病気、進行度)別、治療法の適応

前立腺ガン ステージ

 

8. 前立腺ガン 治療法

手術治療
ガンのある前立腺を全摘出します。
「根治的前立腺摘出術」では、前立腺と周囲の組織やリンパ節、精嚢(せいのう)を一緒に切除します。お腹を切開(せっかい)する方法と、会陰(えいん:)を切開して前立腺を取り出す方法とがあります。
腹腔鏡手術(ふくくうきょうしゅじゅつ)
お腹に小さな孔(あな)を開け、その孔から炭酸ガスを入れふくらませ、腹腔鏡でお腹の中を見ながら行う手術です。開腹手術よりも手術時間は長くなりますが、小さな傷で切除が可能ですから、術後の痛みも少なく数日で退院できる、負担の少ない治療です。
※大腸ガンに対する腹腔鏡での治療は、近年開発された手術法であり、特殊な技術やトレーニングが必要となります。どの施設でも安全に施行できるわけではありません。腹腔鏡手術を希望する場合、専門医がいる病院を受診し、十分に説明を受ける必要があります。
経尿道的切除
ガンが進行して手術が行えない場合に、ガンによる排尿障害などの症状を軽減する目的で行う膀胱内視鏡(尿道から膀胱を観察する内視鏡)を使った治療です。
放射線療法
体の外から前立腺ガンに向けて照射します。転移のない前立腺ガンに対し、根治を目的に行う場合と、骨への転移による痛みの緩和、骨折予防のために使われる場合があります。放射線療法では、皮膚炎や下痢などの副作用を起こすことがあります。
また、早期の前立腺ガンでは、前立腺に放射線を放出する物質を埋め込む「組織内照射法」を行うことがあります。この治療法は、近年開始されたばかりで、副作用については十分に検証されていません。治療後に再発した場合には、手術治療が難しいと考えられています。
ホルモン療法
前立腺ガンは、男性ホルモンの影響で病気が進むという特徴があります。男性ホルモンを遮断(しゃだん)するとガンの勢いがなくなることを利用した治療方法です。副作用として、ホットフラッシュ(のぼせやすくなる)の症状が一般的で、乳房痛や下腹部の脂肪がつきやすくなったり、体重増加しやすくなり、多くの場合性機能が障害が障害されます。
化学療法
抗ガン剤には、ガン細胞を殺したり増殖を抑えたりする作用があります。
手術と組み合わせて使われる方法(補助化学療法)と、手術が難しい場合に使われる方法があります。抗ガン剤を使用する場合、人によっては吐き気や脱毛など多くの副作用が伴います。また、さまざまな抗ガン剤が開発されており、効き目の高い抗ガン剤も出てきています。外来で抗ガン剤治療を受ける日帰り治療や、飲むタイプの抗ガン剤を使う在宅療法が広がるなど、抗ガン剤の治療内容に変化が見られるようになっています。
緩和医療(かんわいりょう)
患者さんの苦痛を和らげることを目的とした、患者さんとその家族に対して行う医療ケアです。ガンの病状や時期に関係なく、体や心のつらさを和らげ、「その人らしさ」を大切にすることを目的に行います。また、ホスピス(緩和ケア病棟)という、ガンの進行に伴う体や精神的な症状があり、ガンの治療が難しくなったりガンの治療を希望しない方を主な対象とした施設などもあります。(施設により、受け入れの基準が異なるため、直接施設にお尋ね下さい。)