卵巣ガン

1. 卵巣ガンの診療の流れ

1

ガンの疑い
「いつもと体調が違う」と感じたら、なるべく早く受診しましょう。

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2

受診
現在の症状や気になっていることなどを担当医に話して下さい。担当医との会話は、メモしておくと便利です。次の診察や検査の予定が決まります。

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3

検査や診断
超音波検査、CT検査、MRI検査などの検査が行われ、検査の結果や診断の説明があります。

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4

治療法の選択
ガンや体の状態に合わせ、治療方針の説明があります。

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5

治療
手術治療、放射線療法、化学療法(抗ガン剤)などの治療法が決まり、治療が始まります。困ったことや辛いことは、遠慮せずに医師や看護婦に話して下さい。

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6

経過観察
治療後、体調の変化やガンの再発・転移がないかなどを確認します。
しばらく通院し、検査などを行うことがあります。

2. 卵巣とは

卵巣卵巣とは、骨盤内の子宮(妊娠時に胎児が入る器官)の両側にある、親指大の対になった臓器です。体の奥の方に、固定がゆるくブラブラした状態で存在します。卵巣は「卵子」をつくりだし、周期的に「女性ホルモン(特定の細胞や臓器の働きをコントロールする物質)」を分泌します。周辺部は「皮質」、中心部は「髄質」という組織でできた、柔らかい塊です。皮質には「原子卵胞(卵子のもと)」がひしめいています。

3. 卵巣ガンの発症

卵巣ガンの原因の一つとして、妊娠や出産が深く関わっていると言われています。
妊娠や出産によって、排卵の回数が少なくなることから、出産の回数が多いほど発症しにくく、出産を経験してないと卵巣ガンになる可能性が高くなると考えられます。卵巣ガンでもっとも多い「表層上皮性腫瘍(ひょうそうじゅひせいしゅよう)」の発生には、排卵の時に卵巣上皮が壊れることと、その修復が関係していると考えられているため、排卵の回数が少なければガンの発生する機会も、それだけ少なくなるというわけです。卵巣ガンには授乳も関係していて、授乳経験がある人も可能性が低くなるようです。そのほか、血縁者に卵巣ガンにかかった人がいる場合、遺伝的な物で卵巣ガンが発症する確率が高いと言われています。どんなガンにも言えることですが、動物性脂肪や高たんぱく質の食事、喫煙なども、発ガンの要因とも言われています。卵巣ガンは、40歳代から60歳代に多く見られ、80歳代でも発症がみられることから、加齢による発生も原因の一つかも知れません。

4. 卵巣ガンの検査と受診

卵巣ガンが疑われると、「超音波検査」、「CT検査」、「MRI検査」などの検査を行います。

超音波検査
超音波を腹部に当て、返ってくる反響を映像化して診断する検査です。妊娠中のお腹に当てる検査としても知られています。
卵巣ガンの検査では、膣の中へ超音波発信器を入れて検査する「経膣エコー」を行う場合もあります。
CT検査
X線を使った体の輪切り映像で、腹部や胸部の異常を調べる検査です。治療前検査では、造影剤を注射して検査を行いますので、ヨードアレルギーがある場合は注意が必要です。
ドーナツ状のスキャナーを通過して撮影します。
MRI検査
強い磁石と電波を使った輪切りの映像で、体内の様子を調べる検査です。CT検査と同じような、ドーナツ状のスキャナーを通過して撮影します。

5. 卵巣ガンとは

卵巣ガンとは、卵巣にできる「悪性腫瘍」のことです。
卵巣は数多くの腫瘍ができやすい臓器です。その腫瘍のうちの約85%は良性腫瘍です。残りの約15%は悪性腫瘍と悪性と中間的な性質を持つ腫瘍があります。卵巣ガンには、10歳代から20歳代の若年を中心に発生する「卵巣胚細胞腫瘍(らんそうはいさいぼうしゅよう」と、40歳代から60歳代の中高年を中心に発生する「上皮(じょうひ)卵巣ガン」があります。「卵巣胚細胞腫瘍」は頻度が低く、若年での発症ということで、子宮温存を目的とした治療を行います。卵巣ガンは、転移しにくいガンと、数ヶ月の間に腹部内に転移してしまう進行ガンがあります。逆に、胃ガン、大腸ガンなどの消化器のガンから転移してくることもあります。

*卵巣は左右に一つずつあり、片方の卵巣を摘出したとしても、片方が正常であれば、妊娠が可能になります。1つになったからと言って、妊娠の可能性が半分になる訳ではなく、生理や妊娠の可能性を2つあったときと同じように1つの卵巣が働いてくれます。また、両方の卵巣を摘出する場合も、米粒程の大きさを残すことができれば、妊娠の可能性があります。卵巣を2つとも全摘した場合は、原子卵胞(卵子のもと)がなくなり、妊娠はできなくなります。ホルモンのバランスもくずれ、更年期障害のような、のぼせや発汗、動悸、イライラ、ウツ状態などの症状が出ることがあります。


6. 卵巣ガンの症状

卵巣ガンには、初期症状はほとんどなく、「少し太ったかな・・・」くらいの意識しかないかも知れません。

  • 腹部の痛みや腫れ
  • 骨盤の痛み
  • 頻尿
  • 体重減少
  • 便秘 など

このような症状があらわれた頃には、ガンが進行している場合が多く、さらに進行すると、しこりや茎捻転(けいねんてん:卵巣を支える靭帯(じんたい)が捻れて疼痛が起こる)を起こしたり、腹水や胸水が溜まることもあります。
また、ガンが進行し、転移した先での症状で、卵巣ガンが発見されることもあります。

7. 卵巣ガン ステージ(病期)

卵巣ガンは悪性腫瘍ができている場所、深さや大きさ、転移などの段階により、Ⅰ期、Ⅱ期、Ⅲ期、Ⅳ期に分かれます。

Ⅰ A期

  • ガンが片側の卵巣にとどまっているもの

Ⅰ B期

  • ガンが両方の卵巣にとどまっているもの

Ⅰ C期

  • ガンが、片方または両方の卵巣内にとどまっているもの
  • 被膜が破れ、卵巣表面にガンがあるもの
  • 腹水などにガン細胞がみられるもの

主な治療法としては、「手術治療」、「術後化学療法」などが行われます。

Ⅱ A期

ガンが卵巣の周囲(卵管、子宮)に広がっているが、腹腔内にはガンがないもの

Ⅱ B期

ガンがほかの骨盤組織に広がっているもの

Ⅱ C期

ガンが骨盤内に広がり、腹水などにもガン細胞が見られるもの

主な治療法としては、「手術治療」、「術後化学療法」などが行われます。

Ⅲ A期

顕微鏡で調べた結果、ガンが骨盤外の腹腔にも転移しているもの

Ⅲ B期

肉眼で見て、2cm以下のガンが骨盤外の腹腔に転移しているもの

Ⅲ C期

ガンの大きさが2cm以上で、骨盤外の腹膜に転移しているもので、近くのリンパ節にも転移しているもの

Ⅳ 期

ガンが遠隔の臓器(肝臓など)に転移しているもの

主な治療法として、「手術治療」、「化学療法」、「放射線療法」などがあります。

8. 卵巣ガンの治療法

手術治療
卵巣ガンの手術治療は、ガンのある場所や状態、転移によって、

  • 卵巣、卵管、子宮などを一緒に切除する「卵巣切除」
  • 卵巣ガンがもっとも多く転移する大網(だいもう)を一緒に切除する「大網切除」
  • 転移が疑われるリンパ節を一緒に切除する「リンパ郭清(かくせい)」
  • 転移した大腸、小腸、脾臓などを一緒に切除する「合併(がっぺい)切除」
    を行います。
化学療法
抗ガン剤には、ガン細胞を殺したり増殖を抑えたりする作用があります。
手術と組み合わせて使われる方法(補助化学療法)と、手術が難しい場合に使われる方法があります。抗ガン剤を使用する場合、人によっては吐き気や脱毛など多くの副作用が伴います。また、さまざまな抗ガン剤が開発されており、効き目の高い抗ガン剤も出てきています。外来で抗ガン剤治療を受ける日帰り治療や、飲むタイプの抗ガン剤を使う在宅療法が広がるなど、抗ガン剤の治療内容に変化が見られるようになっています。
放射線療法
放射線をガンに向けて照射する「外照射」と、腹腔内に薬剤を注入して、体の内側から表面を照射する方法があります。脳に転移した腫瘍に対して行うこともあります。

「外照射」による副作用として、全身倦怠(ぜんしんけんたい)や吐き気、嘔吐、食欲低下などの症状が人によって起こることがあります。

緩和医療(かんわいりょう)
患者さんの苦痛を和らげることを目的とした、患者さんとその家族に対して行う医療ケアです。ガンの病状や時期に関係なく、体や心のつらさを和らげ、「その人らしさ」を大切にすることを目的に行います。
また、ホスピス(緩和ケア病棟)という、ガンの進行に伴う体や精神的な症状があり、ガンの治療が難しくなったりガンの治療を希望しない方を主な対象とした施設などもあります。(施設により、受け入れの基準が異なるため、直接施設にお尋ね下さい。)

9. 卵巣ガン 治療後の経過

転移について
転移とは、卵巣のガン細胞が血液やリンパの流れに乗って、他の臓器で増殖することです。
進行している卵巣ガンは、高い確率で転移します。卵巣ガンのもっとも多い転移先は腹膜(ふくまく)で、腹膜播種(はしゅ)を起こします。卵巣の表面からパラパラとガン細胞が腹膜に広がり、横隔膜(おうかくまく:胸と腹腔との間にある膜状の筋肉)という、卵巣から離れた腹膜にも転移が多く見られます。腹膜播種が進行すると、腹水や胸水がたまってしまいます。そのほかにも、「後腹膜」という腹部大動脈の周りや骨盤内のリンパ節、胸部や首のリンパにも転移をすることがあります。
再発・再発の予防
再発とは、手術や抗ガン剤の治療により、一旦は治ったように見えていたガンが、再び出現することを言います。卵巣ガンは再発しやすいガンの一つです。卵巣ガンの予防によく言われているのは、高カロリー、高脂肪の食事を摂りすぎないことです。緑黄色野菜をたくさん摂り、バランスのよい食事を心がけましょう。また、ストレスや喫煙、飲酒なども関わりがあるようです。
再発予防の治療
再発が一部にとどまっている場合は、その部分を手術治療するだけで、ガンのない状態が続くことになりますが、広範囲に広がってしまった再発ガンの場合は、ガンの切除を目的とした手術治療ができないので、症状を軽減するための手術を行うことがあります。また、最初に行った抗ガン剤での治療が有効だった場合、再発ガンに対しても同じ抗ガン剤を使用することができます。多くの場合、再発に対する抗ガン剤治療も、ガンの根治が目的ではなく、症状を軽減させる治療として使われます。
予後
卵巣は、女性ホルモンの分泌をしているため、摘出してしまうと「卵巣欠落症」(更年期障害のような症状)が出てきます。代表的な症状は「のぼせ」や「ほてり」です。
プールなどで行う運動療法も効果があると言われています。徐々に消失していくので、リラックスして過ごして下さい。リンパ節を切除すると、リンパの流れが滞り足に溜まり、「リンパ浮腫(ふしゅ)」の症状が起こることがあります。放っておくと皮膚が硬くなり感染症になって高熱が出たりします。感染症は抗生剤ですぐ治りますし、マッサージや理学療法もとても有効だと言われています。
通院頻度
卵巣ガンは、一般的に治療終了後1年間は毎月、2年目は3ヶ月毎、3年目は4ヶ月毎と通院が必要になります。再発・転移を起こしやすいので、早期発見・治療が重要になっています。