肺ガン

1. 肺ガン診療の流れ

1

ガンの疑い
「いつもと体調が違う」と感じたら、なるべく早く受診しましょう。
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2

受診
現在の症状や気になっていることなどを担当医に話して下さい。担当医との会話は、メモしておくと便利です。次の診察や検査の予定が決まります。
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3

検査や診断
胸部X線や喀痰細胞診、気管支鏡検査、穿刺吸引細胞診、胸部CT検査、MRI検査、PET、胸膜生検などの検査が行われ、検査の結果や診断の説明があります。
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4

治療法の選択
ガンや体の状態に合わせ、治療方針の説明があります。
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5

治療
手術治療、放射線療法、化学療法(抗ガン剤)などの治療法が決まり、治療が始まります。困ったことや辛いことは、遠慮せずに医師や看護婦に話して下さい。
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6

経過観察
治療後、体調の変化やガンの再発・転移がないかなどを確認します。
しばらく通院し、検査などを行うことがあります。

2. 肺とは

肺は呼吸器系の重要な臓器です。酸素を体内に取り込み、二酸化炭素を排出する役割を持っています。

a.心臓、b.気管、食道などからなる「縦隔」という部分をはさみ、左右に2つ、「ア.右肺」「イ.左肺」に分かれ、右肺は「①上葉」「②中葉」「③下葉」とよばれる3つの部分に、左肺は「④上葉」と「⑤下葉」に分かれています。

肺の図

縦隔にある心臓が中心より左側に寄っているため、その分左肺が小さくなっています。口と鼻から空気を取り入れ、「b.気管」を通って、左右に分かれた「c.気管支」から肺に入ります。気管支は肺の中で木の枝のように広がり、酸素と二酸化炭素を交換する「肺胞」が末端にあります。

3. 肺ガンの発症

肺ガンは、遺伝子が何らかの異常を起こすことが発症の原因の一つになっているのではないかといわれています。ガンに関係する遺伝子には、働きから「ガン遺伝子」と「ガン抑制遺伝子」の2種類に大きく分けられます。これらの遺伝子に、加齢や生活習慣、喫煙(もっとも密接な関係)により傷が付き、異常が起こることで、ガンが発生したり増殖をすることがわかってきました。
また、たばこが肺ガンの発症原因として、男性で68%、女性で18%と推計されています。たばこを吸わない人でも、喫煙者の煙を慢性的に吸ってしまう「副流煙(ふくりゅうえん)」が肺ガンの原因ではないかと考えられています。副流煙は強いアルカリ性で、喫煙者が直接吸っている主流煙(しゅりゅうえん)よりも有害物質が多いと言われています。
そのほか、アスベスト、シリカ、砒素(ひそ)、クロム、コールタール、放射線、ディーゼルの排ガスなども肺ガンの要因としてあげられますが、特殊な職業に関わった人のかかる肺ガン(職業性肺ガン)で、その職業と関わりがなければ、特に心配する必要はありません。

4. 肺ガンの検査と受診

咳や痰などの症状があり、肺ガンが疑われると、「胸部X線」や「喀痰(かくたん)細胞診」を行い、痰が出ない場合または痰での診断が難しい場合は「気管支鏡検査」を行います。気管支鏡検査で不十分な場合は「穿刺(せんし)吸引細胞診」、ほかにも「胸部CT検査」や「胸膜生検」、転移などを調べる場合は、「MRI検査」、「PET」などの検査が行われます。

胸部X線
胸部にX線照射を行い、肺を調べる検査です。
喀痰細胞診
痰(たん)にはがれ落ちたガン細胞が混じってないかを調べる検査です。肺ガンであれば、必ずガン細胞が混じっているという訳ではないため、数回検査を繰り返す必要があります。
気管支鏡検査
内視鏡(ファイバースコープ)を口や鼻から挿入して気管支の中を調べ、採取した組織や細胞を顕微鏡(けんびきょう)で検査(生検 せいけん)します。
穿刺吸引細胞診
局所麻酔を行い、肋骨(ろっこつ)の間から細い針を肺の病巣(びょうそう)に刺し、採取した細胞を顕微鏡で検査します。
胸部CT検査
X線を使った体の輪切り映像で、腹部や胸部の異常を調べる検査です。治療前検査では、造経済を注射して検査を行いますので、ヨードアレルギーがある場合は注意が必要です。ドーナツ状のスキャナーを通過して撮影します。
胸膜生検
局部麻酔を行い、肋骨の間から特殊な器具で胸膜を採取し、調べます。胸水(肺の外側に水が溜まる)がある場合は、胸水も採取し検査します。
MRI検査
強い磁石と電波を使った輪切りの映像で、体内の様子を調べる検査です。ドーナツ状のスキャナーを通過して撮影します。
PET
ブドウ糖に近い成分の検査薬(FDG)を体内に注射し、PET(CTやMRIのようなドーナツ状のスキャナーを通過)で撮影すると、検査薬が多く集まるところがわかり、ガンを発見す手がかりになるという検査です。

5. 肺ガンとは

肺ガンは、肺や気管、気管支などに発生する「悪性腫瘍」のことを言います。
「a.小細胞肺ガン」と「非小細胞肺ガン」の2つに分かれ、顕微鏡で見たガンの組織の特徴から、さらに非小細胞ガンは、「①扁平上皮ガン」、「②腺ガン」、「③大細胞ガン」などの組織型に分類されます。

肺ガンの分類

この他、「カルチノイド」と呼ばれる比較的おとなしい、まれな肺ガンもあります。早期治療で治る可能性が高いガンです。40%は中心部に、60%は肺の末梢に発生します。肺の末梢に発生した場合は無症状であることが多く、中心部に発症すれば、閉塞性肺炎(へいそくせいはいえん)を起こしたり、喘息のような症状を起こすことがあります。カルチノイドは他の肺ガンに比べ、若年層に発症することが多くみられます。定型型カルチノイドでは転移が少ないですが、非定型カルチノイドでは、リンパ節や肝臓などへ移転することがあります。

6. 肺ガンの分類


 

7. 肺ガンの症状

肺ガンの一般症状

  • なかなか治りにくい咳
  • 痰(たん)
  • 血痰(けったん:痰に血が混じっている状態)
  • 声かれ
  • 顔や首のむくみ
  • 胸痛

呼吸器に症状が出やすいものですが、風邪の症状に似ていることが多いので、注意が必要です。また、早期のガンは症状がわかりにくく、健康診断や他の病気で医療機関にかかってる時に発見させることも多いようです。
肺の端に発生するガンは、ガンが大きくなるまで症状が出ないこともあります。進行して
肋骨に達成したときや、ガン性胸膜炎(がんせいきょうまくえん:胸膜にガンがばらまかれ、胸水がたまること)になったときに胸痛や呼吸困難の症状が出る場合があります。

その他、

  • 肩こり
  • 肩痛
  • 背中の上部が痛む
  • 肩から腕の上部の痛み

なども、まれにあります。
肺ガンも他のガンと同様に、疲労感や食欲不振、体重の減少がみられます。

8. 肺ガン ステージ(病期)

小細胞肺ガン ステージ(病期)

小細胞肺ガンは、悪性腫瘍ができている場所、深さ、大きさ、転移などの段階により、
「限局型(げんきょくがた)」と「進展型(しんてんがた)」に大きく分けられます。治療は主にステージにより決定されますが、同じステージでも、全身状態、年齢、心臓、肺機能などにより、治療が異なる場合があります。

小細胞肺ガン ステージ
 

非小細胞肺ガン ステージ(病期)

非小細胞肺ガンは悪性腫瘍ができている場所、深さや大きさ、転移などの段階により、0期、ⅠA期、ⅠB期、ⅡA期、ⅡB期、ⅢA期、ⅢB期、Ⅳ期に分けられます。

非小細胞肺ガンの進み具合(病気、進行度)別、治療法の適応

非小細胞肺ガンの進み具合(病気、進行度)別、治療法の適応
 

非小細胞肺ガン ステージ0期

ガンが上皮内(臓器の表面を覆っている膜)にとどまっているもの
治療法・・・内視鏡(レーザー治療)、手術療法

9. 肺ガン 治療法

内視鏡治療(レーザー治療)
気管支の内部に発生した「肺門型」の肺ガンに行われます。
内視鏡で見える範囲のガンをレーザー光線で照射し、治療します。副作用や合併症がほとんどないことが利点ですが、極めて限られた早期のガンにしか適応しません。
手術治療
標準的な手術として、ガンの発症している肺葉(上葉、中葉、下葉)と、転移している場合はリンパ節を郭清(かくせい)します。
また、片方の肺を全て切除する場合もあります。発症しているガンが小さい場合でも、肺葉ごと切除しないと予後が不良になってしまいます。小細胞肺ガンの場合、頻度は少なく、極めて早期の場合に行われます。
化学療法
抗ガン剤には、ガン細胞を殺したり増殖を抑えたりする作用があります。
手術と組み合わせて使われる方法(補助化学療法)と、手術が難しい場合に使われる方法があります。抗ガン剤を使用する場合、人によっては吐き気や脱毛などの多くの副作用が伴います。外来で抗ガン剤治療を受ける日帰り治療や、飲むタイプの抗ガン剤を使う在宅治療が広がるなど、抗ガン剤治療の内容に変化が見られるようになっています。
放射線療法
手術が難しい場合や、手術後の再発したガンの痛みを抑えるために行われます。
抗ガン剤の効かない脳への転移による頭痛や嘔吐などの治療にも使用されます。放射線により、胃の粘膜が荒れたり、胃痛や胃潰瘍(いかいよう)のような症状になる副作用が伴うことがあります。
緩和医療
患者さんの苦痛を和らげることを目的とした、患者さんとその家族に対して行う医療ケアです。ガンの病状や病期に関係なく、心や体のつらさを和らげ、「その人らしさ」を大切にすることを目的に行います。また、ホスピス(緩和ケア病棟)という、ガンの進行に伴う体や精神的な症状があり、ガンの治療が難しくなったりガンの治療を希望しない方を主な対象とした施設などもあります。(施設により、受け入れの基準が異なるため、直接施設にお尋ねください。)