乳ガン

1. 乳ガン診療の流れ

1

ガンの疑い
「いつもと体調が違う」と感じたら、なるべく早く受診しましょう。
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2

受診
現在の症状や気になっていることなどを担当医に話して下さい。担当医との会話は、メモしておくと便利です。次の診察や検査の予定が決まります。
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3

検査や診断
視・触診、マンモグラフィー、超音波検査、細胞診(穿刺吸引細胞診)、病理組織検査(針生検)、マンモトーム生検、CT検査、MRI検査が行われ、検査の結果や診断の説明があります。
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4

治療法の選択
ガンや体の状態に合わせ、治療方針の説明があります。
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5

治療
手術治療、放射線療法、化学療法(抗ガン剤)などの治療法が決まり、治療が始まります。困ったことや辛いことは、遠慮せずに医師や看護婦に話して下さい。
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6

経過観察
治療後、体調の変化やガンの再発・転移がないかなどを確認します。
しばらく通院し、検査などを行うことがあります。

2. 乳房とは

乳房

乳房(にゅうぼう、ちぶさ)とは、ほ乳類が持つ乳腺を覆う「授乳器官」です。

 

乳房 詳細図

 

女性の乳房は、乳汁(母乳)を分泌する乳腺組織、外分泌線の「①乳腺」が存在しています。中央には外部に乳汁を分泌する開口部「②乳頭」があります。
乳房は、乳頭を中心に「乳腺」が放射状に15個から20個並んでいます。乳腺腺房が集まった器官の「③小葉」に分かれ、「④乳管」という管でつながっています。

 

3. 乳ガンの発症

乳ガンの発生・増殖には、体内で作られるホルモンに大きく関係しています。
体内で作られるホルモンは代謝を調節し、体の状態がいつも良好になるように作用しています。卵巣から分泌される女性ホルモンには「エストロゲン」と「プロゲステロン」の2種類があります。

  • エストロゲン(卵胞ホルモン)・・・乳ガンに影響を与えるホルモンです。エストロゲンは主に卵巣で分泌され、乳房の細胞分裂を強く促す物質です。男性にも乳房はありますが、女性ほど分泌量が多くないため、乳ガンにかかりにくいと言われています。
  • プロゲステロン(黄体ホルモン)・・・卵巣の黄体(おうたい:排卵後の卵胞)から分泌されるホルモンです。子宮内膜の増殖を促し、妊娠に適した状態にする働きがあります。

生理の期間は、女性の体内でエストロゲンが多く作られ、体内のエストロゲンの濃度が高くなり
ます。簡単に言うと、「エストロゲンにさらされている(あびている)期間」=「生理がある期間」
と考えればわかりやすいと思います。

  • 高齢で初産や出産経験がない(妊娠している期間は生理がないので)
  • 初潮年齢が早い
  • 閉経年齢が遅い
  • ホルモン補充療法を長期間続けている
  • 経口避妊剤を長期間使用した

などの場合は、注意が必要となります。

また、閉経後の高脂肪食、肥満なども脂肪組織でエストロゲンが作られていると言われますので、注意が必要です。乳がんは、30歳代から増加し始め、50歳前後にピークを迎えます。

4. 乳ガンの検査

乳ガンが疑われると、「視・触診」、「マンモグラフィー」、「超音波検査」、「細胞診(穿刺(せんし)吸引細胞診)」、「病理組織(びょうりそしき)検査(針生検)」、「マンモトーム生検」、「CT検査」、「MRI検査」などの検査を行います。

視・触診(し・しょくしん)
視診では、乳房の大きさや形、左右の位置、皮膚の状態、乳頭からの分泌物などを調べます。触診では、乳頭からの分泌物、しこりの有無、しこりがあった場合は大きさや形、硬さ、表面の状態などを調べます。
マンモグラフィー
乳房をはさみ、圧迫してX線撮影する検査です。触診では見つかりにくい小さなガンが見つかることがあります。
超音波検査
超音波を腹部に当て、返ってくる反響を映像化して診断する検査です。妊娠中のお腹に当てる検査としても知られています。
細胞診(穿刺吸引細胞診)
しこりに細い針を刺し(超音波を見ながら刺す場合もあります)、細胞を吸い取り、採取した細胞を調べる検査です。やや痛みを伴いますが、約90%の確率でガンかどうかを診断することができます。
病理組織検査(針生検:はりせいけん)
細胞診で十分な診断ができないときに、やや太い針でしこりの一部を採取し、調べる検査です。針が太いため、麻酔をして検査します。多く細胞を摂ることで多くの情報が得られ、診断がより確実になります。
マンモトーム生検
病理組織検査で使用する針よりさらに太い針で検査します。1回針を刺すと、何度も組織を吸引でき、小さなしこりであれば、取り切ってしまうことも可能です。
CT検査
X線を使った体の輪切り映像で、腹部や胸部の異常を調べる検査です。治療前検査では、造影剤を注射して検査を行いますので、ヨードアレルギーがある場合は注意が必要です。ドーナツ状のスキャナーを通過して撮影します。
MRI検査
強い磁石と電波を使った輪切りの映像で、体内の様子を調べる検査です。CT検査と同じような、ドーナツ状のスキャナーを通過して撮影します。

5. 乳ガンとは

乳房でしこりができやすい箇所乳ガンとは、乳房にできる「悪性腫瘍」のことを言います。良性腫瘍の多くは、しこりがそれほど硬くなくゴムのようで指で押すと動くもので、悪性腫瘍はとても硬く、指で押してもほとんど動かないと言われています。乳ガンの約90%は乳管から発生し、残りは小葉から発生すると言われます。また、乳ガンはガン細胞が小さい時期から乳腺組織からこぼれ落ち、浸潤(しんじゅん)し、リンパ管や血管に入り込み、血液の流れに乗って、離れた他の臓器へと転移(遠隔転移:えんかくてんい)すると考えられています。

男性も乳ガンになることはありますが、女性の1/100以下のまれなガンです。しかし、女性に比べて予後が悪いと言われています。

6. 乳ガンの症状

乳ガンでよく見られる症状は「しこり」「乳頭の変形」「皮膚(ひふ)のへこみ」「オレンジの皮のような皮膚(ひふ)」などがあげられます。
乳ガンの代表的な症状は乳房のしこりですが、乳ガンの状態はさまざまです。しこりがあれば全て乳ガンとは限りませんが、早めに受診されることをお勧めします。

しこり
5mmから1cm位の大きさになると、自分でさわってわかる大きさになります。
乳ガンのほかにも、乳房にできるしこりがあります。

乳腺症 30歳代から50歳代にできやすい、ホルモンバランスの乱れからできる良性のしこり
乳腺炎 多くは、乳腺組織に細菌感染で、炎症を起こした物
乳腺繊維腺種 15歳から30歳代の若い女性に発症しやすい、乳腺にできる腫瘍
乳房の変形
乳ガンが乳房の皮膚(ひふ)の近くにあると、ガン周辺の皮膚がひきつれ、えくぼのようにくぼんだり、乳頭がへこんだり、変形したりします。
オレンジの皮のような皮膚
乳ガンが進行すると、広範囲に浸潤し、皮膚が赤くはれ、毛穴のへこみが目立ってきます。
さらに進行すると、オレンジの皮のように皮膚が盛り上がり、潰瘍(かいよう)が確認できたり、悪臭や出血がみられるようになります。
乳房以外の症状が出たときは、周囲の血管やリンパ管などに転移している可能性があります。わきの下、胸骨の近く、鎖骨(さこつ)の上下などのリンパ節に転移することにより、リンパ液の流れが悪くなり、腕のむくみや、腕の神経を圧迫し、しびれなどがあらわれることがあります。また、リンパや血液の流れに乗って、別の臓器に転移したガン細胞は、症状がまったく出ないこともありますが、骨へ転移した場合、腰や背中、肩の痛みが続くことがあります。肺に転移した場合、咳(せき)や痰(たん)が出て、呼吸が苦しくなることもあります。

7. 乳ガン ステージ(病期)

大腸ガンは悪性腫瘍ができている場所、深さや大きさ、転移などの段階により、0期、Ⅰ期、Ⅱ期、ⅢA期、ⅢB期、Ⅳ期に分けられます。

乳ガンの進み具合(病気、進行度)別、治療法の適応

乳ガンの進み具合

 

8. 乳ガン 治療法

手術治療
乳房にできたガンを切除する場合、広がりや深さ、場所によりさまざまな手術が行われます。しこりを含めた乳房の一部を切除する「乳房温存手術」や、ガンのできた側の乳房を全部切除する「単純乳房切除術」、転移がある場合は、リンパ節や大胸筋、小胸筋、同時に切除します。
乳がんの切除後は、腕のむくみやしびれなどの後遺症が起こることがあります。マッサージや腕を上げることで、改善していきます。
化学療法
抗ガン剤には、ガン細胞を殺したり増殖を抑えたりする作用があります。手術と組み合わせて使われる方法(補助化学療法)と、手術が難しい場合に使われる方法があります。抗ガン剤を使用する場合、人によっては吐き気や脱毛など多くの副作用が伴います。
また、さまざまな抗ガン剤が開発されており、効き目の高い抗ガン剤も出てきています。外来で抗ガン剤治療を受ける日帰り治療や、飲むタイプの抗ガン剤を使う在宅療法が広がるなど、抗ガン剤の治療内容に変化が見られるようになっています。
ホルモン療法
乳ガンは、ホルモン受容体を持っている場合が多く、その場合は女性ホルモン(エストロゲン)の刺激がガンの増殖に影響しているとされ、ホルモン療法を行います。
ホルモン受容体を持っているかいないかは、手術で取り出した乳ガンの組織で調べ、ホルモンに影響されやすい乳ガンを「ホルモン感受性乳ガン」、「ホルモン依存性乳ガン」とよびます。ホルモン療法の副作用は、化学療法に比べると軽い物が多いのですが、乳ガンや血栓症、骨粗鬆症のリスクが高まるものがあります。
放射線療法
乳ガンでは、手術ができない進行した場合や、切除手術を行った後、乳房やその周辺の再発予防を目的に行われます。
また、転移したガンの痛みなどの症状を緩和するために行う場合もあります。放射線が当たることにより、日焼けと同じような症状が起こることがあります。
緩和医療(かんわいりょう)
患者さんの苦痛を和らげることを目的とした、患者さんとその家族に対して行う医療ケアです。ガンの病状や時期に関係なく、体や心のつらさを和らげ、「その人らしさ」を大切にすることを目的に行います。
また、ホスピス(緩和ケア病棟)という、ガンの進行に伴う体や精神的な症状があり、ガンの治療が難しくなったりガンの治療を希望しない方を主な対象とした施設などもあります。(施設により、受け入れの基準が異なるため、直接施設にお尋ねください。)

9. 乳ガン 治療後の経過

転移について
転移とは、乳房のガン細胞が血液やリンパの流れに乗って、他の臓器で増殖することです。進行している乳ガンは、高い確率で転移します。治療する前に既に転移していることも少なくありません。乳房以外のリンパ節や胸壁(きょうへき)、皮膚(ひふ)、ほかの臓器に転移がみつかった場合、「遠隔転移(えんかくてんい)」といい、ガン細胞が全身に広がっている状態と考えます。乳ガンは骨、肺、脳、胸膜、肝臓に転移しやすく、特に骨に多くの転移がみられます。
再発・再発予防
再発とは、手術や抗ガン剤の治療により、一旦は治ったように見えていたガンが、再び出現することを言います。乳房温存術後、最初にガンの発生した乳房と同じ乳房に再発した場合、「局所再発」といい、ほかの臓器に転移がみられない場合は、乳ガンを摘出する手術が行われ、治癒が期待できます。
乳ガンは食生活、運動習慣、アルコールや喫煙などの生活習慣が影響していると言われています。また、エストロゲンが過剰に働くと乳ガンを増殖させる原因となります。乳ガンの発生リスクを上げないように、できるだけエストロゲンの分泌を抑えましょう。 

  • 高脂肪食を多く取りすぎたり、肥満や過体重になると、脂肪組織で作られる女性ホルモン(エストロゲン)の量が増加すると言われています。
  • アルコールは女性ホルモン(エストロゲン)の血中濃度を高めると言われています。
  • 運動は女性ホルモン(エストロゲン)の分泌を抑えると言われています。週数回の運動が乳ガン発生率を低くするという報告があります。

たばこが影響させるガンは肺ガンや咽頭(いんとう)ガン、喉頭(こうとう)ガンを思い浮かべますが、肺から吸収された発ガン物質は、血中に入って全身を巡り、悪影響を与えています。また、たばこを吸っている人のそばで吸ってしまう「副流煙」も、吸ってる本人よりも多くの有害物質が含まれています。たばこを吸う人のそばで長居は禁物です。

再発予防の治療
再発を予防するための治療には、「化学療法」(抗ガン剤治療)、ホルモン療法、放射線療法などがあります。根治手術後も、目に見えないガンが存在するとして行われます。
手術後に行われる抗ガン剤やホルモン療法により、再発率が低下することが知られています。また、放射線療法による局所再発も減少がみられます。