6. 重粒子線治療

(じゅうりゅうしせんちりょう)

概要

重粒子線(炭素イオン線)を体外から病巣(びょうそう)に照射し、ガンを治療します。
重粒子線治療は放射線療法の1つです。
ガンの治療に使われている放射線は、大きく「光子線(こうしせん)」と 「粒子線(りゅうしせん)」の2つに分けられます。
(図1)

「光子線」とは、光の波であり、「エックス線・ガンマ線」など従来の放射線治療に利用されています。「粒子線」は、粒子を利用した放射線で、水素という最も軽い元素(げんそ)の原子核(げんしかく)を利用した「陽子線」と、炭素原子から電子をとった炭素イオンを利用した「重粒子線」があります。

重粒子線治療は、(1)ガン病巣に狙いをしぼって照射できる事(2)ガン細胞を破壊する力が強い事が最大の特徴です。

(1)ガン病巣に狙いをしぼって照射

従来の放射線治療に利用される「エックス線」「ガンマ線」は、体外から照射すると、体の表面近くで放射線の量が最大となり、それ以降は深さとともに減少していきますが、「陽子線」や「重粒子線」は、体の表面付近の放射線の量は小さく、粒子が停止する付近で最も大きくなります。この性質を利用して、ガン病巣の部分で粒子が止まるように調節すれば、ガン病巣に狙いをしぼって照射することが出来るのです。ガン病巣の部分だけを狙い打ちするので、正常な細胞への影響は最小限に抑えることができ、副作用も従来の放射線治療に比べて少ないといわれています。

(2)ガン細胞を破壊する力が強い

同じ粒子線であっても、陽子線が生体(細胞や臓器)に与える影響はどの深さでも同じに働くのに対して、重粒子線は、標的に近づくほど放射線の量も大きくなり、生体(細胞や臓器)に与える影響も高くなる特徴を持っています。すなわち、重粒子線は細胞を破壊する力が強く、光子線や陽子線の約2~3倍高いといわれており、1回の照射で得られる効果が高く、短期間での治療が可能なのです。
また、照射中に重粒子線による直接的な痛みや熱を感じることはなく、切らずに治すガン治療として注目されています。治療施設が少ない為、地域により受診できる患者さんが限られてしまうといった現状がありますが、現在建設中の施設もあり、期待されています。

治療の効果が期待できるガン

限局性固形ガン(げんきょくせいこけいがん)ですが、各治療施設ごとに治療できるガンの種類が決まっています。

(1)有効であるガン

(下に書かれたガンであれば、全て治療できるわけではなく、診察や検査などで治療が可能であるかどうか判断されます)

  • 頭蓋底腫瘍(とうがいていしゅよう)
  • 頭頸部ガン(とうけいぶがん)(口・のど・鼻・副鼻腔)
  • 眼腫瘍
  • 非小細胞肺ガン
  • 肝細胞ガン
  • 前立腺ガン
  • 直腸ガン術後骨盤内再発
  • 骨腫瘍(特に骨盤・脊椎)
  • 軟部組織腫瘍(なんぶそしきしゅよう)(筋肉・脂肪・血管)

(2)効果が期待されるガン

  • 脳腫瘍
  • 中枢神経腫瘍(ちゅうすいしんけいしゅよう)
  • 膵臓ガン
  • 子宮ガン
  • 食道ガン

治療の対象とならないガン

  • 白血病などの血液のガン。
  • 胃ガン、大腸ガン。消化器は動きが不規則で、ピンポイントの照射が困難であることと、壁が薄いため大量に放射線が当たると潰瘍(かいよう)をおこしたり、穴があく危険性があるため。
  • 以前に同じ部位に放射線治療を受けている場合。
  • 広範な転移がある場合。

治療の条件

  • 自身がガンであることを認識している。
  • 以前に同じ部位に放射線治療を受けたことがない。
  • 病理診断がついていて、評価可能な病変を有する。
  • 原則として腫瘍の最大径が15cmをこえない。
  • 広範な転移がない。
  • 主要臓器機能が保たれており、歩行や身の回りのことはできる。
  • 治療時に、同じ姿勢を保っている事が可能である。

治療の方法

重粒子線治療は、巨大な加速器を用いて、炭素イオンを光の60~80%の速度まで加速し、エネルギーを高めて照射します。
ガン病巣に正確に照射するために、毎回同じ姿勢をとることが大切です。まず、そのための身体の固定具を作成します。実際の治療と同じ状態でCT撮影をし、そのCT画像をもとに、照射方向や照射回数、照射量を決めたりする治療計画が行われます。治療計画をもとに、患者さんそれぞれにあった重粒子線のビームの形を決める型などの器具が作られます。治療開始前には、実際の照射と同じように、治療リハーサルが行われます。これらの準備を1~2週間かけて行ってから、治療が開始されます。
照射の回数は、病気の種類や状態によって異なりますが、1~16回で、1回の治療時間は、20~60分程度(治療室に入ってから出るまで)、照射時間は1~2分程度です。治療期間は1~5週間です。

治療による副作用・合併症

ガンのある部位、照射の方向、放射線の量によって副作用は異なります。また、同じような治療計画でも、副作用の現れ方にはかなり個人差があります。

  • 照射中、照射後の早い時期に起こる早期反応としては、口内炎や皮膚炎などがあげられます。前立腺の治療の場合には,、排尿時の違和感や出にくい感じが起こる事があります。いずれの場合も一時的な症状で、通常治療終了後2~4週間で改善します。
  • 治療が終了してから、半年から数年後に起こる副作用もありますので、治療後の定期的な受診により、早期発見し、重篤化を防ぐ必要があります。


重粒子線治療を行っている医療機関

関東

名称 独立行政法人放射線医学総合研究所・重粒子医科学センター病院
URL http://www.nirs.go.jp/hospital/index.shtml
住所 千葉県千葉市稲毛区穴川4丁目9番1号
電話 (043) 206-3306
費用 3,140,000円
名称 国立大学法人群馬大学医学部附属病院
URL http://hospital.med.gunma-u.ac.jp/
住所 群馬県前橋市昭和町三丁目39-22
電話 027-220-7111(代表)
費用 3,140,000円

近畿

名称 兵庫県立粒子線医療センター
URL http://www.hibmc.shingu.hyogo.jp/ionbeam.html
住所 兵庫県たつの市新宮町光都1丁目2番1号
電話 (0791)58-0100(代)
費用 2,883,000円

建設中の施設

九州

  • 佐賀県 九州国際重粒子線がん治療センター サガハイマット
    http://www.saga-himat.jp/
    2013年春の開設を目標としている施設です。